生徒会の秘蜜〜ケモノ達の誘惑〜
「はァ?!んなの、ダメに決まって、ッ――――……」
――――ヒュ、ン……パシッ……
呉那蓮司が最後まで言葉を言う前に、僕は殴るために手を出したはずなのに……。
「……おい、蓮司。こーゆうのは、避けないで止めろ」
「ッ……今の早さのを止めろって、無理があんだろ?!」
殴る対象だったはずの呉那蓮司の姿は視界から消え、呉那蓮司がいた場所には僕の拳を片手で受け止めている月代零夜の姿。
月代零夜の足元に視線を落とせば、呉那蓮司が後ろに手をつく体勢で座り込んでいるのが見えた。
「でもまぁ……ッ、こりゃ反射的に避けちまうのも、無理ねぇかもなァ……」
「ふぅん……君は避けなかったみたいだけどね、月代零夜」
グッと僕が右腕に力を込めると、月代零夜は眉間に皺を刻みながらも、それでも僕の手を止めている。
「それに……止めるなんてすごいよ、君は」
……面白い。
無意識に口端が上がっていき、感嘆の言葉が零れる。
「そりゃ……どーもッ!!」
――――ビュ、ン……
「チッ、お前も避けてんじゃねぇかよ……」
言葉と共に顔横に照準を合わせた蹴りを繰り出され、それを間合いを取って避ける。
「蹴りを真っ向から受けるのは、馬鹿がすることだからね」
「そォかよ……気に喰わねぇなぁ。そういやぁお前、その腕章……」
ふと小さく呟く月代零夜の視線には、僕の肩口。
そこには、僕が生徒会長である証の腕章がついている――――……