生徒会の秘蜜〜ケモノ達の誘惑〜


「ん〜……」

那智くんは襟足の髪を指先で遊ばせながら、考え込んでしまった。

時雨くんを見ると、那智くんを見ながら苦笑いを浮かべていた。

あたしの視線に気付いた時雨くんはこちらを向き、微笑みを浮かべた。




「行きましょうか、ラビさん」




「えっ?!」




普通に那智くんの隣をすり抜け、時雨くんはあたしの手を引いて学園に向かおうとする。

もちろん那智くんは置き去りのままで、考え込んでしまっている那智くんはあたし達に気付いていない。

「大丈夫ですよ。放っておけば、後から気付いてついてきますから」

「で、も……」

時雨くんが大丈夫と言っても置いていくのはダメな気がして、未だに考え込んでいる那智くんを振り返りながら見つめる。


「大丈夫ですから、ね?」


ね?なんて首を傾けながら諭すように言われてしまえば、首を横には振りにくくて。

かと言って、頷くわけにもいかずに那智くんがいるであろう背後をキョロキョロと伺いながら、時雨くんに手を引かれる。


「そんなに心配ですか?那智のこと」


「へ……?」


前を向いて歩いていた時雨くんが、振り向きざまにそう問うてくる……とても真剣な表情で。

そんな時雨くんの表情を疑問に思いながらも、あたしはコクリと小さく頷く。


「この辺りは、すごく入り組んでるから…」


今歩くこの道を含めたこの辺りは、初めて来た人には分かりにくく迷いやすい造りになっている。

こんな処で迷ってしまっては学園に遅れてしまうだろう。


「あぁ、そういう意味の心配ですか」


真面目な表情をふわりと笑顔に換え、それなら安心しました、と時雨くんは呟く。








時雨くんの言う“安心”とは、何に対するどんなモノだろう?


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