白い鼓動灰色の微熱
「清香ちゃん」
 
防音されているとはいえ、音が全く漏れないわけではないので、幾つかあるスタジオのドアからは、そのバンド特有の音が漏れ出していた。
 
その中に、微かに彩人の声がある。
 
本当に聞こえるのか、これも、DNAのなせる不思議な業で、彩世にだけ分かるのかは定かじゃなかった。
 
黙って近づいて行くと、清香は缶を唇から離して、彩世の方を見た。
 
彩世がそこにいるのを知っていたような視線だ。

「いらっしゃい。よく、ここが分かったわね。それとも、彩人に訊いたの?」
 
彩世はニッコリ微笑んだ。

「清香ちゃんに会いたいから、お前のスケジュール教えろって?」
 
清香の隣には、清香が飲んでいるのと同じスポーツドリンクがちょこんと鎮座していた。
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