白い鼓動灰色の微熱

カリタテラレル

同時に、彩世の抗えない何者かが、彩世に命令してくる。
 
彩世はその声の言うとおり、ニッコリと微笑んだ。そして、

「いいよ。いつでも待ってるから」
 
そう、誰かに体を乗っとられてそれに喋られた気がした。

「バレたら彩人に怒られるよ」
 
誰か、が彩世の中からいなくなると、彩世は慌てて言った。

「大丈夫バレないわ。彩人の育った家だもの、見てみたいわ」
 
ああ、どうしよう。
 
清香がうちに来たら、殺してしまうかも知れない。
 
いや、彩人のライブのない日にきてもらえば平気かもしれない。
 
彩世は仕事用の名刺を取り出して、一枚、清香に渡した。

「来る気になったら連絡して」

言うと、立ち上がった。

清香が手を振っているので、手を振り替えした。

そのとき、一つのスタジオのドアが開いた。

彩人のバンドのメンバーらしき人間が出てくるのが見えた。

休憩だろうか。

彩世は急いで自分の姿を隠すべく、エレベーターは待たずに、階段のある方に飛びのいた。
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