白い鼓動灰色の微熱
ビルの一階まで軽快に階段を下りると、彩世は誰かに呼ばれた。

目で探すと、ビルの外に女の人が立っていた。

意外そうに、そして嬉しそうにこちらを見ている。

「内藤です。彩世君」

高い鼻。
 
目にはアイラインを引き、付け睫毛をつけているので、目元が黒々として見える。
 
彩世はこういうメイクは嫌いだった。

『どちらさまですか?』
 
訊こうとして、真っ直ぐな黒髪を掻き揚げた指に目が行った。
 
細く長い指。
 
親指の爪だけが妙な具合に横長で、不恰好だった。
 
それで思い出した。
 
内藤こずえだ。
 
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