白い鼓動灰色の微熱
よく、彩世のいるネイルサロンにくる客だった。
 
しかも、必ず彩世を指名してくる。

まあ、彩世を指名してくる客は多いのだが。

初めはオトコが珍しいのか、敬遠される。

けれど、中にはそのルックスに惹かれて指名してくる客もいる。

そして、技術の確かさに、次回からも指名を繰り返されるのだ。

「駅まで行くところなの。良かったらご一緒にいかが?」

 駅の方向なら、彩世の帰る方向だ。断る理由がなかった。

「ええ、いいですよ」
 
だけれど忘れていたのだ。

彩人がスタジオにいることを。
 
ぽつぽつと世間話をしながら歩いていて、いきなりそれは襲ってきた。
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