白い鼓動灰色の微熱
ポケットから出した皮の手袋をゆっくりはめると、こずえをそっと床に寝かせた。

キッチンの引き出しの一つを開けると、雑多な調理器具の中に、アイスピックが数本混じっていた。

出かけるたびに、店を変えて買い揃えておいたものだ。

でもそれは、持ち主の下から綺麗な手たちを開放してあげるための手段に使うためのものだ。

こずえは違う。

こずえから命を奪ってしまうと、ただの殺人になってしまう。

それなのに、指先が、一本のアイスピックに伸びた。

まだ彩世の中の血がたぎっている。

オレはこずえを殺すつもりなんだ。

自分が操り人形のようにこずえに引き寄せられていくのを、彩世は黙ってみているしかなかった。

やめて。

心の中で叫んでみても、彩世の行動は変わらなかった。
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