白い鼓動灰色の微熱
あの大柄な女を見かけたところと関係があるような気がするのだ。
 
もう少しで思い出しそうだった。
 
豊は頭をコツンとビルの壁にぶつけた。

あ。

その瞬間、豊は思い出した。

あの大柄な女には、咲に無理矢理に連れて行かれたライブハウスで見かけたのだ。

思い出すと、なんだかそれが重要な鍵のように思えてきた。

誰のライブだっけ。

思い出すんだ、豊。

豊はゴンゴンと壁に頭を打ちつけた。

誰かが見ていたら絶対不審人物だな。

余計なことを考えていて、ふっと思い出しかけた。

ぐにゃっとした語感の名前だった。

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