白い鼓動灰色の微熱

キヨカ

けれど、そのままつられて中に入ってしまったのは初めてだった。

「そうか。オレが呼んでしまったんだな」

彩人は今度は静かな声で言った。
 
演奏が終わったのだ。
 
歓声が上がり、女の子達が、彩人の方に押し寄せる。

「彩人。その人誰っ?」
 
興味津々の声が沸き起こる。

「双子の弟だよ。オレよりかっこいいだろ」

言って、彩人はにっと笑う。

実際父も、彩人より彩世のほうが整った顔をしていると言って可愛がってくれた。

秘密の地下室への入り口も、父は彩人には教えなかった。

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