白い鼓動灰色の微熱
けれど、体はたぎる血に支配されている。
 
彩世はキッチンに立って、引き出しからアイスピックを一本手に取った。
 
もう、皮の手袋はしていなかった。
 
べったりと指紋をつけていたら、誰かがオレのことを見つけてくれる。
 
そんな淡い期待があった。
 
冴子の長く柔らかい髪を掻き揚げて、うなじを露出させた。
 
右手がしっかりとアイスピックを握っている。
 
目は、一刺しにする場所を探っている。
 
体の中の血が、殺れという。
 
ゆっくり力強く、鼓動が波打っている。
 
殺れ。
 
殺れ。
 
頭の中に、別の人格が割り込んでくる。
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