白い鼓動灰色の微熱
前はこんなことなかったのだ。
 
綺麗な指を、体から開放してあげるという、崇高な儀式であったはずの殺しが、今は理由を先行してなされようとしていた。
 
冴子の指は欲しくない。
 
長く綺麗なのだが、のたっと大造りで、可憐さやしなやかさがない。
 
ただ、仕事が終わって帰るのを、待ち伏せされていた。
 
それだけの理由で、殺さなければいけない羽目になった。
 
冴子に会った瞬間、彩人が歌いだしたのだ。
 
彩世の体中の血が逆流を初め、冴子をうちに招いた。
 
冴子は喜んで付いてきた。
 
断ってくれれば、それで収まりが付いたかもしれないのに。
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