白い鼓動灰色の微熱
冴子をここに案内する途中にも一度、こんな状態のときがあった。多分、彩人が歌うのを一旦やめて休憩していたのだ。
 
一回のスタジオ入りで、多くても休憩は一回だと聞いたことがある。
 
と、いうことは、今度のは休憩なんかじゃなくて、練習を終えたというコトだ。
 
彩世は溜まっていた呼気を逃がそうとするように、そっと息を吐いた。
 
それから慌てて、アイスピックをしまってある引き出しに向かうと、調理器具に混ざって並んだ五本のアイスピックを、全部掴み取った。
 
とりあえず、今度誰かを殺せと頭と体を支配されて命令されても、殺すのに手間取るようにしようと思った。
 
こんな手近に置かずに、もっと取りに行くのに時間がかかるところへしまい込んでしまえばいい。
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