白い鼓動灰色の微熱
彩世はアイスピックを持って、寝室のクローゼットに入ると、その一角の底に造られた地下への入り口を開けた。
 
コンクリートむき出しの冷ややかな空間に微かに腐臭が混じっていた。
 
咲の指が腐食し始めたのかもしれない。
 
せっかく体から解き放ってあげても、指は体なしには生きられないのだ。
 
そんなこと、母のときにわかっていたハズだった。
 
腐食を始めた母の手を、泣きながら庭の隅に埋めたのだ。
 
数日前には、母の後始めてころした女の手を、埋葬した。
 
今度は、咲か。
 
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