白い鼓動灰色の微熱
クロロホルムに入れると、せっかくの綺麗な指が膨張してしまいそうな気がする。

第一、そんなもの大量に購入して妖しい証拠を残すのは嫌だった。

 でも、何の手立ても考え出せないまま、この地下の冷たい空気の中で、着実に、指たちは腐っていくのだ。
 
もう、やめにしなければ。
 
腐ってしまうくらいなら、一生、体にいいようにこき使われて、その美しさを少しづつ犠牲にして、確実に衰えていく方がまだ、劣化は遅い。
 
階段を降りきってドアを開けると、腐臭は濃くなった。
 
咲も、埋葬するしかない。
 
彩世はアイスピックを、マニキュアの並んだ棚の引き出しに放り込んで鍵をかけた。

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