白い鼓動灰色の微熱
その鍵を壁にかけると、部屋の中央のガラステーブルの上に置かれた咲の手を、黒い小さなゴミ袋にしまった。

「さよなら、咲。短い間でごめんね」
 
ゴミ袋を手に、換気扇のスイッチを押すと、機械がうなり始めた。

目でも、それが動いていることを確認すると、彩世は地下室を出て、そこにも鍵をかけた。

アイスピックにたどり着くまでの、障害は多い方がいい。

クローゼットの出口を出ると、蓋を閉めて、その上に、捨て損ねたままになっている雑誌の束をドサドサと乗せた。

五束ほどの雑誌の山が出来る。

これでいい。

できることなら、クローゼットにも鍵をかけたかった。

けれど、このクローゼットにはそんなものはなかった。

どうせ家族に秘密の地下室なんて造るのなら、もっと凝った構造にして、容易に入れないようにしてくれたらよかったのに。
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