白い鼓動灰色の微熱
違う。

と、理性が小さな声で呟いた。

その声を打ち消すように力強くスコップを地面に突き立てた。

浅く掘ったんじゃ、動物に掘り起こされる危険がある。

昔飼っていたシロという犬は、地面の下にあるねずみの巣を探り当てた。

まだ、人間が可愛く感じるための毛が生えてもいない赤ちゃんねずみを、シロは惨殺して、誇らしげに死骸を並べていた。

あれを観た母は、初め何かわからなかったらしく、じっと座って覗き込んで、それを手に取った。

グンニャリとした冷たいそれは、母の手の中で肉塊であることがわかり、やがてねずみの形に見えてきた。

母は悲鳴をあげた。

彩世は思い出して笑ってしまった。

< 179 / 243 >

この作品をシェア

pagetop