白い鼓動灰色の微熱

キヨカ・・・

冴子を無事に駅まで送り届けて帰ろうとすると、

「彩世、君?」
 
聞き覚えのある声が、彩世を呼び止めた。
 
振り返ると、自分の身長よりはるか下に、清香の姿を見つけた。
 
長身に高いヒールの靴を履いていた冴子とは、ほとんど背が変わらなかったのだが、こういう子を見るとほっとする。
 
概して、身長の高い女の子はおしゃれで、たいてい、高いヒールの靴を履いているものなのだ。
 
清香は、小さいのに、ぺッタンコのサンダルを履いていた。
 
寒いのに、薄い柄物の編みタイツに、サンダルなのだ。
 
おまけに、ミニのスカートにショート丈のコートを羽織っているだけだ。

「寒くない?」

効くと、

「寒い」
 
正直に、清香は言った。

「でも、おしゃれとは我慢の上に成り立つものなのよ」
 
真剣な顔で言うものだから、彩世は笑ってしまった。
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