白い鼓動灰色の微熱
『彩人か?』

彩世の声がした。

どうやら向こうもこっちに電話をしてきていたらしい。

どちらがかけたのが繋がったのか分からない状態だ。
 
けれど、彩世とは、こういう瞬間がよくあるので、驚きもしなかった。
 
別々の部屋にいて、突然何の前触れもなく、何の脈絡もなく、同じ歌の同じフレーズを同じタイミングで歌いだしたりすることもしばしばであった。
 
どうも彩世とは強烈に絡みついた双子なのらしかった。

「今日ライブ」

『今日ライブ』

二人の声はハモっていた。

「来て」
『行くから』

もう、用事は終わってしまった。

二人はクスクス笑うと通話を切った。

「これで大丈夫だ。」

考えてみたら、彩世が、殺人なんて大それたことをする訳がないじゃないか。

彩人は思った。

明日彩世がライブハウスにいるうちに、何かが起きれば、彩世は犯人じゃないってことだ。
彩人は少々楽観的に考えすぎた。

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