白い鼓動灰色の微熱
彩世は清香の傍に立ち止まると、苦笑いをした。

「自分の彼氏のこと、良くそんな風に言うね」

「あら。彼氏だから言えるんじゃない。あたしは整いすぎている彩世君より、ほんのり味のある彩人のほうが好きだもん」

「はいはい」

彩世はのろける清香を、適当にあしらっておくことにした。

「ここから近いの?家」
 
黙って歩き出した彩世にちょこまかとまとわり付いてきながら清香が行った。

「うん」
 
清香があんまりちょこまかするので、彩世は不思議に思って、じっと清香を見た。
 
ああ、そうか。
 
小さい清香とはコンパスが違うのだ。
 
彩世は笑うと、歩く速度を緩めた。
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