白い鼓動灰色の微熱
「ごめん。歩くの早かった?」
 
清香は驚いたように彩世を見た。
 
それから頷くと、
「彩人はそんなこと気にしたことないんだよ。だから、いっつも必死で付いていくの」

百七十センチを微妙に切る彩人が相手でも、多分百四十センチ代な清香には、付いていくのは大変だろう。
 
寡黙な彩人に、ペラペラと喋りながら早足でまとわり付くように付いていく清香を想像して、彩世は笑ってしまった。

「彩世君は優しいね。きっといいほうのエネルギーで出来てるんだよ」

「いいほうの、何?」

「知らない?お母さんに教わったんだけど、ドラえもんとドラミちゃんて兄弟じゃない。でも頭のデキが違うでしょ。あれは同じエネルギーの缶の中身を二人に使ったんだけど、長いこと置いておいた缶の中で、エネルギーが分離してたんだって。良い成分が下に沈んでたの。だから、先にエネルギーを使ったドラえもんは出来が悪くて、後から使ったドラミちゃんは優秀なんだって」
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