白い鼓動灰色の微熱
彼女の手はするりと逃げていった。

「本当にそっくりね、私でも見分けがつかないかもしれないわ」
 
彼女は言った。
 
童顔とミスマッチな、細く長い大人指が、彩世の心を捕らえて離さなかった。
 
まだだ。

彩世は自分に言い聞かせた。
 
この間だって、指輪を付け忘れたせいで、付け爪を一つ、剥がしてしまった。
 
ああいうミスは許されない。
 
彼女の理想的な真っ直ぐで長い指を、彩世は心臓が高鳴るのを押さえきれないで見ていた。
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