白い鼓動灰色の微熱

ポケットに入っていた鍵で地下室のドアを開け、簡単に中に入ってしまえた。

それでも自分の中の何かがイラついているのがわかった。

棚の上に綺麗に並んでいるマニキュアの瓶を忌々しそうに眺めると、端からなぎ倒した。
それから壁にかかった鍵に手を伸ばした。

「駄目だ」
　
彩世は呟いて、抵抗した。

　鍵を取ろうとする右手を、左手で押さえつけようとした。

　両手が、力を出し合って震えている。

　それでも、勝者は右手だった。

　左手を払いのけると、右手は鍵を掴んだ。

　それから素早く、彩世の理性が止めようとする前に、引き出しの鍵を開け、アイスピックを一本握り締めた。