白い鼓動灰色の微熱
 ドアを開け放したまま、階段に飛びつく。
 
 彩世は左手で必死で右手を開き、アイスピックを落とさせた。
 
 体が、それを拾うために、階段を戻る。
  
 拾って上がりだすと、また同じことをしてやった。
 
 二度。

 三度。
 
 四度目には、彩世は叫び声をもらすと、頭を壁に打ちつけた。
 
彩世の理性は気を失った。
 
次に気がついたときには、清香の目の前にいた。
 
彩世の目から涙がボロボロと零れ落ちた。
 
アイスピックを握る手が震えている。

『早く、彼女からこの手を自由にしてやるんだ』
 
頭の中ではっきりと声がした。
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