白い鼓動灰色の微熱
彩世は涙でよく見えない清香を、よく見るために目をぬぐった。

少し視界がハッキリして、だけれどすぐに涙に曇ってしまう。

「駄目だ。出来ないよ」

「なぜだ?」

「清香は彩人の彼女だ」

「それがどうした?」

 左手で、右手から、アイスピックを奪い取ろうとした。なのに、右手がそれをしっかり握って離さない。

「おまえはオレを裏切るのか!!」

 右手に向かって叫んだ。

 体が怒りと恐怖に震える。

それでも、右手だけは微動だにせずに、しっかりとアイスピックを握り締めていた。

「離してくれ!」

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