白い鼓動灰色の微熱
 そして、外の世界へと通じるドアの方を見て彩世の中から力が失せた。

 へたっとその場にしゃがみこんでしまう。

『どこへ行くつもりだ?彩世』

 そこに仁王立ちしていた父が言った。

 彩世はもはや抗う気力もなく、そこにいる父の姿を見上げた。

『彼女を置いてどこに行くつもりだ?』

 彩世の唇から漏れていた声は、今度は頭の中に直接響いてきた。

「そこを、どいて。あやせを通して」

 唇が子供サイズになったかのように、彩世は小さく口を開いて言った。

『駄目だ。戻れ』

 彩世の体はもう、制御不能だった。

 さっきまで理性で動いていた分の自分がどこかに消えてしまった。

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