白い鼓動灰色の微熱
動かなくなったカブトムシを見て、父は笑っていたが、彩世は泣いた。

 標本になどしたくなくて、父の目を盗むと土に埋めてやった。

 カブトムシの次は鶏のひよこ、その次は子猫。

そして、母だった。

 父は生き物の急所を的確に知っていて、アイスピック一本で簡単にそれらの動物を殺すことを教えてくれた。

 母だけは、彩世が殺したのか、それとも彩世がアイスピックを付きたてたときにはすでに死んでいたのか、分からなかった。

 父は、その狂気をむき出しにしたとき、必ず彩世に生き物を殺させて楽しんでいた。

 可愛がっている彩世が、泣きじゃくりながら、生き物を殺す姿を、心底楽しそうに、眺めていたのだ。

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