白い鼓動灰色の微熱
その手を掴んだ彩人は、彩世の右手を両手で持ち直すと、その指を一本づつ、アイスピックから剥ぎ取った。そおしてアイスピックをもぎ取ると、隣にいた清水に渡した。

「もういい。もういいんだ」

 彩人は優しく言うと、彩世を背中から抱きしめた。

 父に乗っ取られていた彩世の体は、魔法が解けたみたいに、自由を取り戻していった。

 彩世は振り仰いで彩人を見ると、彩人に抱きついた。

「早く、清香ちゃんを助けてくれ。お父さんがいるんだ。殺されちゃう」

 清水は、その光景を、映画のワンシーンのように現実からかけ離れたもののように見ていた。

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