白い鼓動灰色の微熱
~釣り人~
「何か釣れてる?」
話しかけてきた子供に、男は黙ってクーラーボックスの中身を見せた。
「ボウズだ」
二カッと笑うと、子供は、
「なあんだ」
言って、スケボーに乗っかって走り去った。
フェリーのつく港で、漁船のようなものも止まっている。
男はその隙間に釣り糸をたらしていた。
さっきまではちょくちょくあった、あたりすらなくなってしまった。
男は腕時計を覗き込んだ。
暑くなったと思ったら昼近かった。
今日はボウズのままかもしれない。
まあいいか。
女房は、魚を持って帰るのを嫌がる。