白い鼓動灰色の微熱
『だれが調理すると思ってるんですか』

その文句が出るほど、ここ数年は釣れなくなっていた。

近々来る大地震の予兆だとか、釣りをするものの中ではまことしやかに囁かれている。

確かに、数年前まではこんなことはなかったのだ。

半日も釣り糸を垂らしていれば必ず一度は回遊してきたサバやアジ、イワシなどの群れに遭遇し、入れ食い状態で釣れていたものなのだ。

それが、ここ数年、なくなってしまっている。

本当に大地震が来るのだろうか。

しかし、何年も前から魚はそれを感知するのだろうか。

竿がグッとしなった。

男は釣りをやるつもりで糸を垂らしていたクセに驚いてしまった。

ひいている。

グッグッと、ウキが心地よく沈んでは現われている。

男は慌てて、竿を持った。

リールを巻く。

かなりの手応えだ。

久しぶりの、しかも大ヒットだ。
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