白い鼓動灰色の微熱
男は竿を立てて糸を引き寄せると、リールを巻いた。

竿がしなる。

一番上の針が見えてきた。

どうも下の方の針にエモノは食いついているらしい。

ね魚か。

重いリールを巻き取った。

ウキを巻き込む手前で止め、竿を立てて引っ張り寄せた。

大物のかかった雰囲気に、さっきの子供が戻ってきて覗き込んだ。

「地球を吊り上げたんだったりして」

「バカいえ。ちゃんと手応えがある」

言いながら、内心ちょっと首を傾げた。
 
ビクビクッという、あの魚がかかったときのえもいわれぬ引きがない。
 
< 27 / 243 >

この作品をシェア

pagetop