白い鼓動灰色の微熱
「こんにちは」
 
ニッコリ笑って言う。
 
と、彼女は恥ずかしそうに笑った。

「あたし、どうしても爪を噛んじゃうもので、綺麗にしてもらったら噛まないかなあと思って」
 
手を見せてもらうと、彼女なりに必死で伸ばしたらしく、この間より僅かに爪が伸びていた。
 
僅か0・5ミリくらいだが、彼女にとってはかじりたいのを必死で我慢して、やっとの思いで伸ばした爪だ。
 
彩世はその手を見られることを恥ずかしがっている彼女に、

「大丈夫。綺麗にするか。」
 
言うと、彼女は安心したように笑った。
 
神谷咲
 
カミタニ サキ
 
カルテにはそう書き込まれていた。
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