白い鼓動灰色の微熱
「嫌あねえ。チャンネルまわしてちょうだい」

店長の木村が言った。
 
チャンネルは押して変えるもので、まわして変えるものじゃない。

そういうコトになって久しいのに、まだ、言葉として残っているのがおかしい。

彩世自身も、チャンネルを回して変えた記憶などなかった。
 
彩世は、店長が嫌がったニュースをチラリと見た。
 
釣り人が港で水死体を吊り上げたらしい。
 
しかも、遺体には左手首から先がなかったという。

彩世は順番を待っているお客用につけているテレビから顔を背けると、咲の手に目を戻した。
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