白い鼓動灰色の微熱
「もう少し頑張って爪、伸ばしてみて。そしたら、次は二月一日においで?」
 
言って、咲の耳元に

「彩人のライブがあるんだ。一緒に行かないか?」
 
咲は顔を輝かせた。
 
咲はもともと彩人のファンなのだ。

彩人そっくりの彩世と一緒に彩人のライブに行けるなんて、この上なく幸せなことのハズだった。

「でも、誰にも内緒にしていてくれないか?スケジュール帳にも、書き込まないで」

咲は頷いた。

そういう秘密めかした逢瀬が彩世の好みなのだと思ったのだ。

「いいね、それ」

咲は言うと、頭の中にそのスケジュールを刻み込んだ。

< 34 / 243 >

この作品をシェア

pagetop