白い鼓動灰色の微熱

咲はシャワーを浴びたところだった。

一人暮らしの部屋なので何の気兼ねも要らない。

雫が滴るのも構わずに部屋を出ると、ベットの上のバスタオルに手を伸ばした。

そこで始めて部屋に誰かいることに気付いて、咲は悲鳴をあげた。

「オレだよ咲」

ユニットバスに逃げ込んだ咲は、そっとドアの影から声の主を見た。

豊だった。

咲が彩人の次に、いや彩人と彩世の次に好きだったオトコだ。

「どうやって入ったの?」

「鍵、開いてた」

一人暮らし歴が長いと言うのに、咲は未だに時々鍵を閉め忘れた。

でも、実害があったのは今日が初めてだった。

「出て行って!」

「後ろを向いているよ。約束する」

「そんなことどうでもいい、出て行って!」

咲は叫んだ。

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