白い鼓動灰色の微熱
ついこの間まで自分に熱を上げていた咲の豹変に、豊は不機嫌になった。

『でも、この状況では仕方がないか』

と思い直して大人しく部屋を出た。

「冗談じゃない」
 
咲は憤慨した。
 
無防備な姿を見られてしまったことが悔しくて腹立たしくて仕方がなかった。
 
憧れの彩人そっくりの彩世。
 
いや、いまは彩人よりも彩世のほうに心惹かれているかもしれない。

何と言っても、ライブに誘ってくれたのは彩世なのだ。
 
その彩世に誘ってもらった自分が、何で豊のようなちょっと、本当にちょっとばかり普通より見た目が良いだけのオトコに関わってやらないといけないのか。

考えただけでもムカついてきた。
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