白い鼓動灰色の微熱

咲 ト

咲はため息をついて時計を見た。

ライブの会場一時間前である。

正確に言うと、五十八分前だ。

『忘れられちゃったのかな』

咲は不安になった。

『こんなことなら、豊をきっちりキープしとくんだった』

舌打ちをしたい気持ちで、もう嫌になるほど見ていた、改札のほうを見た。
 
と、

「やあ、咲ちゃん」

彩世は、改札のほうを睨んでいる咲の後ろから声をかけた。
 
咲は驚いて振り仰いだ。
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