白い鼓動灰色の微熱
今までの緻密な作業で彼の神経はかなりまいっていた。

乱暴に作業したもので、指輪は入ったが、薬指の付け爪が取れてしまった。
 
彼は短く高い奇声を上げると、手を、床に叩き付けた。
 
ベタッと言う音がして、指がおかしな具合に曲がってしまった。
 
それを見て、彼は正気に戻った。

「ごめんね。乱暴にして」
 
囁きかけると、手を拾い上げた。
 
曲がった指をテーブルにおいて伸ばし、取れた付け詰めを貼りなおした。

「完成だ」

彼は手をそっと持ち上げると、棚の上に移した。
 
今は寒いからいい。
 
早く、最良の保管方法を考えないと腐ってしまう。
 
彼は思った。
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