白い鼓動灰色の微熱
「何がいい?紅茶?コーヒー?それともアルコール?」
 
カウンター越しに咲に聞いた。
 
ウンターに触れている、先の細い指を見た。
 
この間よりも白くなった気がする。
 
毎日、手入れを続けているのかもしれない。

彩世はゴクリと息を呑んだ。
 
咲は、多分無意識に、指をカウンターに這わせていた。何かを迷っているときの、咲のクセなのだろう。
 
自分の手の綺麗さを自覚してない彼女は、彩世の前で、その魅力ある動きを繰り返していた。

「紅茶、にしようかな」
 
咲は決めると、指をカウンターから引っ込めた。
 
彩世の視線も、自然にその手から離れる。

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