白い鼓動灰色の微熱
「じゃ、紅茶を入れよう」
 
綺麗に片付いた、数少ない食器を収納した食器棚から、ティーポットとカップ、それに葉っぱの入った缶まで取り出した。

「食器も二人分?」

「そう。言っとくけど、兄貴とオレの分だよ。彼女とかじゃない」
 
言うと、咲は笑った。
 
安心したのと、彩世が思わぬ軽さを見せて言ったことが、楽しかったのだ。
 
彩世は素早く紅茶の用意をすると、彩世の死角で砕いておいたハルシオンを混ぜ入れた。

軽い睡眠導入剤なのだが、こんなもの、医者にかかって眠れないと言うと、簡単に手に入る。

医者には彩世の寝つきがすこぶるいいことなんか分からないのだ。
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