白い鼓動灰色の微熱
二度目に突き刺したアイスピックは、急所にすんなりと納まったらしく、彼女は静かになった。

けれど、血を噴出すのはやめなかった。
 
彩世は血が苦手なわけではないが、さすがに大量に見ると気分が悪くなった。
 
ユニットバス中に飛び散って充満した血の匂いのせいもあったと思う。
 
ステンレス製のサバイバルナイフで左手首を切り始めたときはもっと悲惨だった。
 
彩世はその光景を頭から追い出したくて、目を閉じ、軽く首を振った。
 
あれではまるで殺人鬼だ。
 
オレはそんなんじゃない。
< 68 / 243 >

この作品をシェア

pagetop