白い鼓動灰色の微熱
黒く縁取られた目が、彩世を真っ直ぐに見ていた。

潤んだその目の中に、咲の指の残像を楽しみながら、見つめ返した。
 
どのくらいで、薬が効いてくるんだろう。
 
急激に眠気は襲ってくるのだろうか。

もし、椅子から落ちて、手に怪我でもされたらたまらない。
 
持ち主を失った手からは、自己回復の機能が剥奪される。
 
彩世はカップを持つと、咲をテレビの前に導いた。

「そういえば、これ、ちゃんと観たいって言ってたよね。

店から借りてきておいたんだ。

一時間じゃ、足りないけど、観る?」
 
咲が先日店で見ていたDVDが、すでにプレーヤーに入っていた。
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