白い鼓動灰色の微熱
彼は地下室を出ると、外から鍵をかけた。
 
この地下室は変わり者だった父が建築家を困らせながら造らせたものだった。
 
出入り口の階段は、一階の部屋のクローゼットに続いている。
 
父は女を作り、まだ中学生だった彼を残して蒸発してしまった。
 
それでも、この家を残してくれたことに彼は感謝していた。
 
父がいなくなり、おまけにここを残してくれたことで、彼は趣味に没頭することができるのだから。
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