白い鼓動灰色の微熱
アイスピックは冥土への土産にプレゼントするが、これは、彩世の愛用品だった。

幼い頃に父にもらったのだ。

幼い彩世に平気でこんなものを与えることからも分かるように、父は変わった人だった。
 
幼い頃から、その怖さを教え、間違えのない使い方を教えるために、マッチや包丁、ナイフまでも彩世に与えた。
 
その考えがまるで間違っているとは思えないが、少なくとも彩世に与えた父の勘は、ある意味間違えていた。
 
父は同じように育てられたはずだった彩人には、そんなことをしなかったのだ。

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