白い鼓動灰色の微熱
父が彩人より彩世を可愛がっていたからという、簡単な動機であるが、浅はかだったと思う。
 
幼い彩世は、サバイバルナイフの妖しいまでのその輝きに、すっかり心を奪われてしまった。
 
小さな動物を手始めに切り刻んだりはしなかった。

幼いながらも、そんな前科を残すことは将来の自分のために良くないと思っていた。

ただひたすら、大人になって、本物の人間の肌にそれを突き刺すことを夢想していた。
 
待って、待った。
 
そのチャンスは意外に早く訪れた。
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