白い鼓動灰色の微熱
幸い、彩世の家は一級河川のすぐ傍にあった。
 
夜など、なれない者はその水音のせいでよく眠れないことがある。
 
彩世は、生まれたときから親しんだ音なので、この音がないと帰って寝つきが悪いくらいだった。
 
彩世は咲の体を抱き上げると、そのまま家の裏口へ向かった。
 
そして、少し高くなった庭の隅から、川に向かって咲を投げ入れた。
 
これで、よし。

彩世は満足げに頷くと、家の中に戻った。
 
廊下に落ちた血をぬぐい、ユニットバスに散った血を洗うと、血の気の失せた左手を秘密の地下室に運んだ。
 
楽しみは後に取っておく。
 
咲のカケラを、彩世にとっては咲のすべてをガラスのテーブルに載せると、彩世は外に出た。
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