白い鼓動灰色の微熱
遠足のおやつを、三百円を握り締めて別々に買いに行ったとき、まっるきり同じおやつを買ってきてしまったことを思い出して、彩世は笑った。

「何?」
 
彩世の思考に踏み込むように、キヨカは言った。

「ちょっと思い出し笑い」
 
彩世は叫んだ。
 
と、

「ヒトの女に手を出すなよ、彩世!」
 
マイクを通した彩人の声がした。
 
あの、バカ。
 
呆れて彩人を見ると、歌詞の続きをその、演奏に飲まれないヴォリュームと、聴くものの意識を奪い取るような強烈な魅力の声で歌いながら、こちらを睨んでいた。
 
本気で怒っているわけではない。
 
冗談をかねて、けん制して来ているのだ。
 
彩世はふっと笑った。
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