白い鼓動灰色の微熱
生きて動く、キヨカが欲しくなっていることに、彩世は自分で驚いた。
 
そんな思いと、彼女の綺麗な指を彼女から自由にしてあげたい衝動とが自分の中でせめぎあっている。
 
こんな子に出会ったのは生まれて初めてだった。
 
生きて動く生身の人間に興味が沸いたのは初めてだったのだ。
 
彩世は自分自身が信じられない思いでキヨカを見た。

「キヨカちゃん、キヨカってどう書くの?」
 
今度は聞こえるように声を張り上げて聞いた。

「清いに香る、よ」
 
清い香り。
 
まさにその通り、清く愛らしい香りが漂ってきそうだった。
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