白い鼓動灰色の微熱
そういえば、小さい頃、彩世が転んで大怪我をして、家に帰ると彩人が泣いていたことがあった。
 
肘から上の皮膚がかなり広範囲にズルリとむけるほどの大怪我をしたのだが、そのとき周りに人がいたので、泣きたいのを必死で我慢したのだ。

痛いのを我慢しながら、そっと見ると、手が、じわじわと血を拭いている。痛みには我慢できても、その光景には、思わず泣き出しかけた。
 
それでも必死で耐えて、零れ落ちそうな大粒の涙を目の中一杯にためて、家までたどり着いたのだ。
 
すると、無傷の彩人がかわりに『痛い』と腕を押さえて泣いていた。
 
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