colourless
「啓太ぁっ!」
汗まみれの体を、音も光もない空間が照らす。
いまでも時々見てしまう夢。
重たい体を起こすと、殺風景な部屋が見える。
ここが。ずっと自分の居場所だった。
無色の世界。
「…あ」
そして、気付いたのは机の上に置いてある一枚の紙と通帳。
『今月分、振り込んでおきました。好きに使いなさい 母より』
母親は、嫌いだ。
大人気の女優で知らない人はいない程。それが私の母親。
小さい頃からあまり構ってもらえず、会話を交わしたのだっていつ以来だろう。
女優の母親をもつものだから、私自身の名前も偽っている。
特に新体操で有名になってしまったから。なおさら本当の名前を言える筈がない。