リトルシークレット
第一章・パラソル
その日は雨が降っていた。
人気のない放課後の校舎はとても静かだ。
ちらほらと見える生徒が楽しそうに話しているのが遠くから見える。
「はぁ……。」
小さくため息を一つ。
一人残った教室の窓から、雨の降る校庭を見ながら。
全然進まない白い用紙を机に乗せて、右手には使い慣れたシャーペンを持って、ただ静かに座っていた。
やる気がないものにやる気を起こさせるのはとても難しい。要は気の持ち様なんだが、それが嫌いな数学のプリントならばやる気なんて到底起きる訳がないものだ。
「んー……。」
小さく声をあげる。唸り声の一つでも上げれば少しは苦戦しているように見えるとでも思ったのだろうか。
…途端、
「やっぱダメーーっ!!」
糸が切れたかのように一人大声を上げる。
彼女は、古木縁(ふるきゆかり)
そもそも何故彼女が一人、放課後にこんなことをしているかの話にさかのぼる。